三回くらい、陣痛の波をこえてやっと分娩室にたどりつきました。
立会い出産のため、主人も入室して、白衣に着替えました。デジタルカメラを片手にスタンバイです。
分娩室にも、ソフロロジーのBGMのCDがかけられていました。
私は左手に点滴、右手に血圧計、お腹に分娩監視装置をつけながら、背中を丸め易い、半分体を起こした状態の分娩台に横たわりました。
「今日中に生まれるかもしれないね。ひょっとしたら」
分娩台にたどり着き、夜11時。陣痛の合間に助産師さんが時計を見上げながら言いました。
出産前に、助産師さんの診察があり、背の高く、骨盤のしっかりとした、いわゆる「ガタイのいい」私を見て、
「あなたは帝王切開にならずに普通に下から産むことができるのだったら、体格がいいから安産のほうだと思うわ。ソフロロジーで分娩できるようにがんばろうね。」
と、言ってくれたことを思い出しました。
ここまで陣痛を乗り切ってきたので、あとはもう、その言葉どおり安産を願うばかりです。
初の立会い出産の体験になる主人は、生まれて初めて入った分娩室の中で、少々興奮ぎみだったのか、かなり大きな陣痛をこらえている私をカメラで撮り始めました。
さすがに「やめて」と言って止めてもらいました。
そんな事を言いながら、「カメラに映るんだから髪の毛もっと切っておけばよかった。」とか、普段はコンタクトレンズを使っている目が悪い私は、自分では好きではないメガネ姿がカメラに収められるより、「レーシック手術(近視矯正手術)をしておけばよかった」なんて考えたりしました。
「そういえばさっきトイレに行ったときに、お小水でた?」
助産師さんに聞かれ、破水したもののトイレで肝心の用を足していない事に気づきました。
というか、破水の勢いに驚いて、おしっこどころではありませんでした。
破水と共に、実はおしっこしていたのに気が付かなかった?のかもしれません。
助産師さんが、私のお腹を触り、
「これ、おしっこたまっているみたいだから出しちゃおうね。ちょっと痛いけどごめんね。」
助産師さんは、尿を取るために私の尿道に管をさしてお腹を押しました。
帝王切開の時にも尿管に管をいれましたが、あの時も痛かった事を思い出しました。
「チョロチョロチョロ」
尿が音を立てて出始め容器に溜まり、おしっこを我慢していた訳ではなかったのに、300ml程たまりました。
立会いしている主人も、
「すげー」
と、一言。これからもっとすごいですよ。ご主人さま。
「陣痛がきたら息を吐いてね。陣痛きたら教えて。」
ソフロロジー教室で教えてもらったように、陣痛がきたら身体を少し丸めて大きく息を吐きながら力を入れてあげます。
陣痛がくるたび、私は、
「きましたっっ!」
と助産師さんに告げ、大きく息を吐いていきみました。
「見えてきたよ!頭。ご主人、鏡で見せてあげて。」
この産婦人科では、分娩中に赤ちゃんの頭が見えてきた時点で、鏡で赤ちゃんの様子を見せてくれるという説明を、ソフロロジー教室で受けていました。
「あっ、ホントだ、見えた!」
と、主人。陣痛がおさまったところで、足元の方を見てみると、主人が持ってくれた手鏡に愛しの赤ちゃんの頭が少し映っていました。
2~3センチの幅に赤ちゃんの頭が。濡れた海藻のような髪の毛らしきものが見えました。
自分の大事な部分をあんな風に鏡で見るなんて初めて!
しかも赤ちゃんの頭・髪の毛らしき黒いものが見えている!
分娩中はホルモンの関係で、大事な部分が柔らかくなるとは知っていたけれど、あんなに開くなんて!
驚きと、感激と、嬉しさでいっぱいです。
「触ってごらん」
と助産師さん。
海藻のように見えましたが、確かに髪の毛です。
髪の毛に触れた時の感触は今でも忘れられません。
産婦人科の超音波でしか見ることができなかった私たちの赤ちゃんを手に感じ、大感激です。
お腹の痛みもぶっ飛びました。
「ベビーちゃん、ママがんばるよ~、もうじきだからベビーちゃんもがんばってね~」
髪の毛しか触っていないのに、可愛くていとしくて仕方がありませんでした。