お腹につけたNST(ノンストレステスト)の器械(分娩監視装置)を見ながら、
「へその緒巻いてるかもしれないわ」
私の足元で助産師さんが言いました。
酸素不足で分娩監視装置の赤ちゃんの心拍数があがっていたのでしょうか。
でも助産師さんは、いたって慌てる様子もなく、とどこおりなく分娩は進みました。
分娩室の隣は手術室です。ふと目をやると、暗がりに手術室のベッドが見えました。
「ひょっとしたら、あそこのベッドで産んでいたかも」
帝王切開の予定がたってから一週間足らず。
分娩の真っ只中、分娩台にいる自分が、なんだか不思議に思えたりしました。
陣痛は続きます。
私は分娩台の上で、陣痛が来るたび助産師さんに「きましたっ」と告げます。
「はい、吐いて~」
助産師さんがリードしてくれます。
背中を丸めて、長く大きく息を吐き出しました。
痛くて緊張すると産道も硬くなるので、陣痛がきたらとにかく助産師さんの言うとおりに息を吐いて力を加え、陣痛が去ったら赤ちゃんに酸素が届くようにリラックス、という事に集中しました。
私の場合、点滴だけの時間が長く、空腹感も絶頂。
この分娩という大仕事を少しでも早く終えておにぎりを食べたいというのも集中できた要因だったと思います。
しかし陣痛は痛かった。
この産婦人科は、会陰切開はしないと言っていましたが、赤ちゃんの頭が出てくる時には、大事な部分が切れるようなヒリヒリする痛みが。
けれどもここまできたら赤ちゃんとのご対面ももうすぐ、目の前。
「早くでておいで~」
早く赤ちゃんをこの胸に抱きたい、という気持ちで、痛いとはいえども「痛い」のは二の次でした。
「ちょっと待って!ストップね!!」
助産師さんが大きな声で言ったので下を見ると、私の身体から、頭がブラリと出ているではありませんか。
一瞬しか見ることができませんでした。だから今でも残像でしか思い出すことができないのですが、確かに頭です。
私の足の間から、ベビーが出かかっている。不思議な感じ。
色は青いような、紫のような、外側は白っぽく覆われているような??
顔は私の左足の方を向いていたような?
「頭、あたまが出てる~~」
心のなかで叫びながら天井を見ました。
子供の頭が私の足と足の間から出ているあの光景はなんだか凄かった。
赤ちゃんの頭が出て直ぐ、助産師さんは、赤ちゃんの鼻や口の中をスポイトのような物で吸いました。
また陣痛の波が来て、すぐ
「ドバドバ、バシャッッ」「スルッ」
破水した時のような勢いの羊水と共に、赤ちゃんが私の産道から流れ出ました。
赤ちゃんが私の身体から抜けていく、お腹にあったものが滑って出て行くような感覚。
待望の赤ちゃんの体が出てきました。
助産師さんが再び鼻や口をスポイトみたいなもので吸うと、途端に赤ちゃんの身体はふわ~っと赤くなり始め、
「おぎぃやぁぁ、おぎゃ」
と泣き始めました。
「おめでとう~!元気に生まれたよ!」
助産師さんの手には私たちのベビーちゃんが!
「うまれた~!!」
「うわぁ、かわいい~っっ」
私達の第一声でした。